「最近、ちゃんと笑えているかな。」
そんなことを考える日は、自分のことより、誰かの顔が先に浮かびます。忙しい毎日の中でも、きっと元気にしている。そう思いながらも、少しだけ気になってしまう。

会いに行くほどではないけれど、何も伝えないまま過ぎてしまうのも違う気がして。そんな小さな想いが、そっと花を選ぶきっかけになることがあります。
朝、宅配便が届き、箱を開けた瞬間。ぱっと明るい色が目に飛び込んできて、思わず頬がゆるむ。
「わあ。」
その一言だけで、部屋の空気まで少し軽くなった気がする。
玄関に置いたバッグをそのままにして、まずはテーブルの上を少し片付ける。いつもなら後回しにする雑誌を重ね、読みかけのメモを端へ寄せて、花が座る場所をつくる。たったそれだけのことなのに、部屋全体が「今日」という一日を迎える準備を始めたように見えてくる。

お気に入りの音楽を流し、窓を少しだけ開ける。夏の終わりを知らせる風がカーテンを揺らし、部屋の空気がゆっくりと入れ替わっていく。ふと目を向けるたび、やわらかな色が視界に入り、自然と口角が上がる。理由なんてなくても、心は色に励まされることがあるのだと思う。
昼過ぎ。洗濯物を取り込みながら、リビングへ戻るたびに花が目に入る。何気ない家事の途中なのに、少しだけ足取りが軽い。
「今日はいい日かもしれない。」
そんな気持ちは、大きな出来事から生まれるものではなく、案外、こんな小さな景色から始まるのかもしれない。
午後の光は、朝よりも少しやわらかくなり、花びらの色も、どこか落ち着いた表情を見せ始める。通り過ぎるたびに、その表情が少しずつ違って見える。何かを語りかけるわけではないのに、「大丈夫。」そう言われているような気持ちになる。
忙しさでいっぱいだった心に、少しだけ余白が戻ってくる。その余白があるだけで、深呼吸をしたくなったり、冷蔵庫に残っていた果物を切ってみようと思えたり、今日という一日を、もう少し丁寧に過ごしたくなる。
花は、暮らしを大きく変えるものではない。けれど、小さな選択を少しずつ優しく変えていく。

夕方になり、部屋の光がゆっくりと橙色へ変わっていく。朝の明るさとも、昼の軽やかさとも違う、穏やかな空気の中で、花は一日を静かに見守ってくれているようだった。
今日あった出来事を思い返してみる。笑ったこと。少し疲れたこと。なんでもない会話。どれも特別ではないけれど、その一日を少し好きになれた理由のそばには、いつもやさしい色があった。
「明日も、きっと大丈夫。」
そんな気持ちで一日を終えられることは、何よりもうれしい贈りものなのかもしれない。
花は、「笑ってね。」とは言わない。「元気でいてね。」とも言わない。けれど、目に入るたびに、肩の力を少し抜いてくれる。忙しさの中で忘れそうになる、自分らしい笑顔を思い出させてくれる。
だから、この花は、飾るためだけではなく、暮らしの中で何度も笑顔に出会うためにあるのかもしれません。
この花を選んだ人も、きっと同じ景色を思い浮かべていたのでしょう。最近会えていない友人へ。新しい暮らしを始めた家族へ。いつも周りを気遣って、自分のことは後回しにしてしまう大切な人へ。
「最近、ちゃんと笑えているかな。」

そんなふとした心配が、花を選ぶ理由になる日があります。照れくさくて言葉にはできないけれど、「無理しすぎないでね。」「今日もあなたらしく過ごせますように。」その願いを、花なら静かに届けてくれる気がします。
受け取った人の部屋が少し明るくなり、何気ない一日に笑顔がひとつ増える。その笑顔を思い浮かべながら、花を選ぶ。その時間まで含めて、贈りものになるのだと思います。
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