心を込めて故人を偲ぶ：失敗しない「お供え花」の選び方

急な訃報に際し、悲しみに暮れる中で「どんなお花を選べば、故人のご冥福を祈り、ご遺族に寄り添うことができるのだろうか」と、心を痛めていらっしゃる方もいることでしょう。

お花は、言葉に尽くせない想いを静かに伝える、かけがえのない手段です。

この記事では、お花に詳しい中級者の方にもご満足いただけるよう、単なるマナーに留まらない、故人の個性や宗派、そしてご遺族の状況に配慮した、一歩踏み込んだ「お供え花」の選び方をご紹介します。「仏花」「供花」といった専門用語の理解を深めながら、失敗のない、心温まるお供えを実現しましょう。

１. 「お供え」の心：呼び名の違いとそれぞれの役割

まず、弔事の際に贈るお花には、いくつかの呼び名と役割があります。これらの違いを明確にすることで、贈るべきお花の形式やタイミングが見えてきます。

「お供え花」とは、故人やご先祖様に対し、哀悼の意と感謝の気持ちを込めて供えるお花の総称です。葬儀や法事はもちろん、日々仏壇に供える花も含めた、最も広い意味を持つ言葉です。ご遺族への配慮として、「心ばかりのお供えとして」という添え書きとともに贈られることも多いでしょう。

「供花」は、主に通夜、葬儀、法事といった儀式の場で、故人のご冥福を祈り、弔意を伝えるために贈られる花を指します。名札を付けて会場に並べられることが多く、祭壇の雰囲気や宗派によって、生け方や色合いに指定がある場合があります。

もし急に「供花」を手配する場合は、まず葬儀社にご連絡ください。葬儀全体の統一感を大切にするため、個人の判断で花屋に依頼するのではなく、葬儀社の指定する業者を通じて手配するのが最も確実で、ご遺族に手間をかけさせません。

「仏花」は、日頃、仏壇やご本尊にお供えする花のことです。短い命である生花を供えることで、「命の尊さ」「常に変化し続ける無常の理」を悟り、仏様の慈悲に感謝するという深い意味合いがあります。

ご自宅へ弔問に伺う際に持参するアレンジメントや花束は、この「仏花」として飾ってもらうことを想定し、花瓶に生けやすいよう茎の長さを調整したり、仏壇の大きさに合うようなサイズを選ぶといった細やかな配慮が大切になります。

お花の選び方は、故人が亡くなられてからの時期（忌中・忌明け）と、宗派の慣習によって大きく異なります。

時期	主な目的と花の印象	適した色合い
四十九日（忌中）まで	故人を悼む、静謐で清らかな雰囲気	白を基調に、淡い色（薄水色、淡い紫など）をわずかに加える。
四十九日後（忌明け以降）	故人の穏やかな供養へ	白に加え、故人が好きだった色や、優しく明るい色（ピンク、黄色など）を加える。

弔事における白い花は「故人への純粋な想い」「穢れのない供養」を意味し、最も丁寧な印象を与えます。特に初七日、四十九日、一周忌までの重要な法要では、白を基調とするのが基本ですが、故人が好きだったお花や明るい色を加えて、優しい雰囲気でお気持ちを伝える事も失礼にはあたりません。

白上がりのおすすめお供え花

お花に詳しい中級者の方であれば、「マナーは守りつつも、故人らしさを表現したい」とお考えになるでしょう。

故人の好きだった花を選ぶ：もし故人が特定の花（例：リンドウ、トルコギキョウ）を好んでいた場合は、四十九日以降の法事や、ご自宅へのお供えとして、それらの花を主役に据えるのは素晴らしい心遣いです。ただし、その花が「トゲ」「毒」「強い香り」といったタブーに抵触しないかだけは確認が必要です。

「三色」「五色」への配慮：伝統的な「仏花」では、白、黄、紫、ピンク、緑（葉物）の五色を基調とすることがあります。より奥ゆかしい色合いを目指すなら、白、紫、緑の三色に絞る「三色使い」も落ち着いた美しさがあり、ご遺族にも喜ばれます。

好みの色から選べるお供え花

「お供え」として避けるべき花には、必ず理由があります。その理由を知ることで、代替の花選びがスムーズになります。

タブーとされる花	理由	代替におすすめの花
バラ（トゲがある花）	「傷つける」「争い」を連想させる。ご遺族が手入れの際に怪我をする恐れ。	トルコギキョウ、カーネーション、キク
彼岸花（毒がある花）	仏教の教えでは、命あるものは避けるべきとされます。特に小さなお子様やペットがいるご家庭では危険。	キク、リンドウ、デンファレ（蘭）、スターチス
香りが強すぎる花（カサブランカなど）	故人やご遺族が体調を崩す、または食事や読経の邪魔になる。	ユリは、香りの控えめな品種を選ぶ配慮が必要です。
ツル性の花	絡みつく姿が「執着」を連想させ、「成仏の妨げになる」という考えから。	キク（洋菊も可）、アルストロメリア、キンギョソウ